ソラティオーネ(Solatione)のキアンティとメルロー

〜人とテロワールからの答え〜

 生産者のソラティオーネについては、「ワイン渉猟記(円熟期)」に記述があるので、ここでは詳しく書かない。
 このワイナリーの植栽面積は小さい。キアンティ・クラッシコの年間生産本数は平均すると10000本で、この数字が仕事の規模を語っている。ワイナリーをけん引するのはファビオで、週2回フィレンツェの消防組合で働いている。労働力は彼の妻のエリザベッタと母親、それに妹のフランチェスカ。父親のレナートはかなり前に亡くなっている。それでもレナートの時代から取引があり、彼が造ったキアンティもよく知っている。人手が足りなくて瓶詰めしていなかった時期もあった。本格的にここからキアンティを買い始めたのは2003年ヴィンテージからだ。輸入した数量も多くはなかったのであまり人の目に触れなかったが、それでも根強いファンが育った。感謝します。  
 エトリヴァンは、1985年以来、Ama、Fontodi、Felsina、Olena、Villa Cafaggio、Casa Emmaなど様々なキアンティを扱ってきた。今あるのはCasa Emmaくらいで、他はどこで輸入されているのか、はっきりしない。俺様ブランドにあぐらをかくだけで質が伴っていないもの、いじくり過ぎてキアンティ像からかい離してしまったものもある。この10年で生産量を一気に増やしたワイナリーにはあまり期待しないほうがいい。特にベースになるキアンティ・クラシッコにはがっかりさせられる。ところが、ソラティオーネはヴィンテージを重ねるにしたがって品質を向上させた。特にメルローを混醸(10%)するようになってから、その飲み口が断然よくなった。もちろんメルローの質に助けられている面もあるが、サンジョヴェーゼの品質的向上もあった。キアンティ・クラッシコにはサンジョヴェーゼのスパイシーさをどこかに残しておかないと、流行りのスーパートスカーナになってしまう。その意味ではソラティオーネはぎりぎりのところでキアンティにとどまっている。地場品種のコロリーノやカナイオーロの混醸は、キアンティの伝統を伝えようとするファビオの意志の表れと理解する。  
 6月中旬にワイナリーで試飲させてもらったキアンティ・リゼルヴァ2007年には驚いた。これだけのビロード感を持ったサンジョヴェーゼは初めてだ。これは幸運な気候がもたらしたもので、ゆっくりと熟した結果であるらしい。ファビオは「いくら醸造コンサルタントが図を描いても気候がダメな時はダメ」と言った。理想的な気候変化に恵まれた年のタンニンは優しい。このリゼルヴァ2007年は間違いなく㊝、そしてトレ・ビッキエーリ。あるいはそれ以上。
 これから販売する2006、2006年リゼルヴァも質的には2007年とほとんど変わらないが、2007年のほうがやや体格がいい印象を受ける。熟成が進んでソラティオーネのキアンティは「ほっとする飲み口」になっている。ここがいいところ。ファビオ兄妹の人柄に似てそのワインも謙虚。  
 メルロー、ロッソンブローゾ(Rossombroso)2006年も輸入されて10ヶ月近く経った。品質について書くことは何もないと思う。早熟なメルローはトスカーナ沿海部のボルゲリ周辺では、温暖化現象の影響を強く受けて過熟気味になり、メルローをやめてプチ・ヴェルドを栽培する人たちが増えている。しかし、ソラティオーネのテロワールは海抜450メートル。緯度はだいたい旭川に近い。気温の変化につれてぶどうも柿やりんごと同じように色がつく。これはワインにも反映し、赤みの深いキアンティとなる。ぶどう畑の紅葉。澄んだ日に見えるアペニン山脈。その美しさに溜め息さえ漏れる。人でごちゃごちゃする世界自然遺産よりはるかにいい。  
 小さなワイナリーをデビューさせること。これがエトリヴァンが志した仕事。ファビオ兄妹の期待に応えたいと思う。

2010年10月
清風万里秋
佐々木 仁


追記  
 11月2日にソラティオーネから嬉しい知らせが届いた。Mostra del merlot d’Italia 2010で、イタリアを代表する15のメルローのひとつに、ロッソンブローゾが選ばれたという内容だった。ずいぶんロッソンブローゾを褒めてきたので嬉しい。独りよがりではなかった訳だからほっとしている。イタリア全土から集まったメルローの中からベスト15に残るのは容易ではない。これを励みにラッパリータ(L’Apparita)、やデジデーリオ(Desiderio)に追いついて欲しい。  
 尚、Mostra del merlot d’Italiaはトレント州アルデーノ市が毎年10月に開催するイタリアのメルローのみを対象にしたイベントで、今年で8回になる。詳しくはwww.mondomerlot.it