ロブゲザング



 ホームページの扉に見えるワインは「ロブゲザング」で、メンデルスゾーンの生誕200年を記念して作ってもらった。ボローニャに行くと必ず立ち寄るレコード店でたまたま買ったCDが、リッカルド・シャイが指揮したメンデルスゾーンのシンフォニー第2番。この曲には『讃歌』、ドイツ語でロブゲザング (Lobgesang)という副題が付いている。このCDをフィレンツェの宿で繰り返し聴いた。その時に飲んだのが、ピエロ・マージから試飲用に持たされたアジェンダ (Agenda)2006年。出荷は2009年の春になると言っていた。2009年はメンデルスゾーンの生誕200年に当たるので、記念ラベルでワインを輸入できないものかと思ったのが、「Lobgesang」の始まり。バローロやブルネッロのような長命なワインとは思えないが、2014年くらいまでは美味しく飲めるのではないか。そこから先のワインの健康年齢には個体差が出てくるものと思われる。それでも、作曲家の生誕210周年までは期待したい。
 エティケッタ(etichetta、イタリア語でラベルをこう呼ぶ)の意匠は、草野眞輔君にお願いした。ワインも年輪を刻んでいくものなので、日記帳の上にLobgesangとワイン名を入れてもらった。音楽が聞こえてきそうかどうかは、これはすべて受け取る側の判断。
 読売日響は2009年10月17日、サントリーホールでの定期演奏会で『ロブゲザング』を演奏した。指揮は下野竜也だった。2年前の暮れに、ミラノ・スカラ座でシャイの指揮で聴いた演奏と比較すると、合唱に物足りなさを覚えたが、ソプラノがパイプオルガンの脇に移って歌い出した瞬間は圧巻だった。逆にスカラ座のオルガンは、小学校の教室にあるものに毛が生えたようなもので、その響きは合唱の迫力に消され気味だった。
 2010年はシューマンの生誕200年に当たる。ピエロ・マージに再び記念ワインをお願いしている。シューマニアーナ・シリーズ(Ⅰ)として、ロマンツェン(Romanzen)を2010年春に販売する。ヴィンテージに恵まれる限り、毎年新しいエティケッタで出していきたい。シューマンには飲酒癖があったといわれるが、ワインによるものではなかったと思いたい。
 もうひとつ、シューマン生誕200年記念のエティケッタでワインが出る。ワインのぶどう品種はリースリング。バローロ生産者のアルド・ヴァイラ(Aldo Vajra)が引き受けてくれた。リースリングは、元来ドイツのライン地域に育つ品種であるが、ヴァイラのリースリングはミネラル分が多く、3年目くらいから飲みごろが始まりそうな感じなので、どちらかといえばアルザス系のリースリング像に近い。リースリングは、イタリアではアルト・アーディジェ地方で多く栽培されているが、ヴァイラのものとは異なって酸味が低く、ソフトで香りも多い。ネッビオーロの土地で育つリースリングは長熟系の白ワインに育ちそうだ。いずれにせよ、アルドにはリースリング、ライン川、シューマンを結びつけるエティケッタを考えてもらっている。ワインの名前は交響曲第3番『ライン』に因んで、ライニッシェ (Rheinische)と決めている。どんなデザインのエティケッタになるのか楽しみだ。