シューマニアーナ・ロマンツェン (Schumanniana Romanzen)

〜10gの卵白を足してもらった話〜



 実は、このラベルは読み方が難しいらしく、イタリアでは不人気で、最近やっと「シューマニアーナ」と発音してもらえるようになった。このワインは「エティケッタ・ムージカ」シリーズの二番目で、シューマンを選んだ理由は、今年が作曲家の生誕200年に当たることもあるが、僕がたいへんなシューマン好きだからだ。意匠は「ロブゲザング(Lobgesang)」と同様に草野眞輔君にお願いした。
 伊藤 恵さんという女流ピアニストが、20年の歳月をかけてシューマンのピアノ曲すべてを13枚のCDに録音している。このCDのタイトルが「シューマニアーナ」となっている。話題にするSchumanniana Romanzen 2007は、このタイトルを拝借したものではない。イタリア語では「~風」と言いたいとき、たとえば「ナポリ風」はalla napoletanaとなる。そして音楽ではmusica mozartianaのように使われて、モーツァルトの音楽を意味する。CDのタイトルは単に「シューマニアーナ」となっているが、意味するところは明らかに「シューマンの音楽」である。
 実はこのワインは最近販売して好評を得ているガンゾ(Ganzo)とぶどうの構成比率(メルロー70%,サンジョヴェーゼ30%)は同じだが、製造工程のごく一部が違う。瓶詰め直後のガンゾを試飲して、もう少しソフトな感じでもいいのではないかと思った。率直に自分の要望を伝えたら、生産者のピエロ・マージが、タンクに残った分は卵白を使ってタンニンを柔らかくしてみようかと提案してきたので賛成した。ガンゾの倍の20グラム(バリック当り)の卵白を使用することになった。最近、二つのワインを試飲する機会を得た。確かに、シューマニアーナは昨年の秋に飲ませてもらったものよりも丸みを帯びた印象だ。ワインは、ちょっとのことでもその姿を変える。一般的には気温の高い時期を越すと熟成は一歩進むので、また秋に試飲するのが楽しみだ。生産者によれば、10年の熟成は間違いないというから、保管が可能な方は大事に持っておくことをお勧めする。CDと同じ数、つまり13ヴィンテージまでできると嬉しい。
 Romanzenは、シューマンのピアノ曲の一つ。Schumannianaシリーズは毎年リリースするつもりでいるが、番号の代わりにこのような副題を付けてみた。暗い飲酒癖があったと伝えられるシューマンは、身体も心も病んでその生涯を閉じているが、彼が痛飲した酒がワインだったとは思いたくない。


2010年7月
佐々木 仁