ホームページ開設にあたって


 時間の流れはほんとうに早いもので、この仕事(ワイン輸入)に就いて27年が経とうとしている。ほぼ30年近くもワインを探し続けたことになる。僕の場合はイタリアワインだったが、この世界に足を踏み入れたころは、イタリアといえば、キアンティ、ソアーヴェ、フラスカーティ、コルヴォなどが市場の主役で、バローロは名前だけが歩いていた。ブルネッロもビオンディ・サンティしか知られていない時代だった。そのころソムリエを職業にする人たちは名前をあげて数えられるくらいだったのではないだろうか。仕事で役に立つ書物は、柴田書店出版の浅田 勝美著『ホテル・レストランのためのワインの知識とサービス』くらいのもので、しかもこの本は仏・独ワインが中心で、イタリアワインはおまけ程度の扱いだった。イタリア料理店もラ・コロンバ、カピトリーノ、アントニオ、文流などのいわゆる老舗とラ・パタータ、アルポルト、ボルサリーノ、バスタ・パスタの新興店の共存が始まりかけていた。イタリアワインを専門に扱う輸入業者は、記憶に誤りがなければ、モンテ物産、日欧商事、フードライナーなどごく限られていた。僕がデパートの紙袋にワインのサンプルを入れて店を訪ね歩いた時代(エトリヴァン創業期)の風景はこんなものだった。また、消費税導入(89年4月)以前は、高価なワイン(品質的には必ずしもそうでないものもあったが)には従価税が適用され、通関に要する税金もかなりの負担だった。CerettoのバローロやTalentiのブルネッロなどがこれにあたるが、これらは、たとえ今は別のインポーターが扱っているワインであっても、エトリヴァンが創業期にワイナリーから直接輸入したものだった。そのエトリヴァンも今年で24年を迎える。
 エトリヴァンが創業時からこだわってきたのは、自分の感覚でワインを選ぶ姿勢だ。30年近くワインを選ぶ職業を続けてきたが、それは品質と価格の均衡を評価する年月でもあった。米国のワイン格付け雑誌や、イタリア発の評価本を片手にワイン探しをすることはなかった。むしろ、今は「おかしなワイン」に出会うほうが珍しく、どれも品質的にはそれなりの水準に達している。そのワインを輸入するかしないかは、この相手と働いて楽しいかどうかの判断になるが、これがなかなか難しい。また、この人から職業上どれだけ学べるのかも大事な判断要件である。これについて僕は、自分の経験則があり、外れたことがない。それは初対面の握手の感触で、手がゴツゴツしてザラついていれば、いろいろなことが学べる人だと判断する。畑で作業し、醸造現場で労働している人の手には伝わってくるメッセージがある。それはまた、輸入者を通じて最終消費者に伝わっていくものだと信じている。
ホームページ開設にあたって、日本のワインジャーナリズムの草分けといえる有坂芙美子さんに紹介文を書いていただいた。自分でも努力は重ねてきたと思ってはいるが、たいへん多くの方々にも支えられて今日に至っている。改めて感謝したい。
 本サイトで紹介するワインは、自分の好みを優先させて選んだものではなく、「ブランドにこだわってそこまでお金を出さなくても満足を得られるワインはあります」という職業的信念から選んだもの。記念のヴィンテージを探したいとか、こなれたブルネッロを飲んでみたいという場合は別の話になるので、これは別途ご相談ください。
  この先自分がやりたいと思っていることが二つある。ひとつは、イタリアで自分好みのキャンティを作ってもらうこと。具体的にはサンジョヴェーゼにメルローを混醸したもので、熟成にはフランス産とハンガリー産のオーク材を使った木樽を使用する。この二種のぶどう混醸は極めて相性がいい。もうひとつは日本全国に広がるエトリヴァンの得意先レストランで、自分が輸入したワインを開けて参加者にも少し勉強してもらい、それを楽しく飲む時間を共有すること。ホームページ開設のごあいさつでした。