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ヴィンテージ・ワインを開ける楽しみ

〜あの空に続いているワイン~


 ヴィンテージ・ワインというと高価で、それなりの蘊蓄を語ってグラスを傾けるイメージがある。ヴィンテージとは「収穫年」を意味する。したがって、優、良、可がある。「ヴィンテージもの」というと、一般的には優の年を意味する。でも最近は、この優、良、可をあまり当てにしないようにしている。そして、ワインジャーナリズムが取り上げるヴィンテージ格付も参考にとどめている。「これはヴィンテージもの」とかいう宣伝文句をしばしば目にする。優のヴィンテージでなくても、たとえば良の年のものでも、驚くほど健康年齢に恵まれたものもある。あるいは、典型的な長熟系のバローロ、ブルネッロでなくてもびっくりする赤ワインがある。最近の例では、Salice Salentino Riserva 1990, Taurino, Merlot 1990, Serafini e Vidottoなどがある。高校時代の同窓生たちと一緒に飲んだ。「こんな古いものは飲んだことないけど、美味しい」が共通の感想だった。口には出さなかったけど、同窓生それぞれに20年の心の風景が広がっていたであろう。1990年、僕はこの年の4月、フリウリに行っている。春から少雨気味の年で、この傾向は9月の収穫期まで続き、歴史的な優良年となった。ここまでの収穫年でなくても、保管に多少の気を使えば、キアンティ・クラッシコでも10〜12年は充分に熟成する。バルベーラ・スペリオーレ、ロッソ・ディ・モンタルチーノも8〜10年は安泰。「ヴィンテージもの」でなくても古酒の世界は楽しめる、というのが最近僕が到達した結論。
 以下は上記のような体験を踏まえての提案。人生ではいろいろな場面に出会う。人の誕生、またその逆もある。入学、卒業、あるいは入社、結婚などなど。口に入るもので10〜20年と賞味できるものはない。ウイスキーには年代ものが存在するが、収穫年を表示しているわけではない。ワインにはヴィンテージが記載されているので、流れた時間を共に振り返ることができる。これはワインにしかできない。最近、新潟のある方からBarolo 2007年を12本予約したいという話を頂いた。この年に生まれた娘さんが成人した時にこのワインで祝いたいそうだ。20年間は問題なく熟成する。
 Schumanniana 2008年は、シューマン生誕200年を記念して造ったもの。自分のシューマン好きがこんな形になった。シューマン愛好家、あるいは2008年に音楽大学を入学、卒業された方々に、人生の記念として購入していただけるのが一番嬉しい。
 今までは、その時が来て古酒を探すのが普通。これからは今から用意して、育ててみたらどうだろう。時間が簡単に経ってほしくないと思う気持ちは、誰でも同じ。それでも自分とともに生きた「あの空に続いているワイン」を開けるのも、また楽しいのでは。ちなみに、僕が「あの空に続いているワイン」を開ける時に聴く歌は、いつも「愛燦燦」。