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Ci Fù

チフー(Ci Fù )2008年
樽香から離れる消費者

Ceisa

 まずはワイン名のチフー(Ci Fù )から話を始めよう。このワインはたまたま見つけただけで、その混醸比率などには関わりをもっていない。ただ名前を付けたのは僕なので、命名の由来を説明したい。Ci fùとは、イタリア語で「~があった」を意味する。これは「~あった」だけで、現在とのつながりはない。「Ci Fù」に込めたかった意味は「そういえば昔、こんなワインがあった」ということだろうか。では「こんなワイン」とはどのようなものだったのか。
 トスカーナ内陸部で一般的に飲まれていた赤ワインは、サンジョヴェーゼを主体に、カナイオーロ、トレッビアーノ、マルヴァジーアなどを混醸したもので、30年くらい前までのキアンティはこれと似たり寄ったりだった。昔はバリックを使う醸造工程はなかったから、大樽かセメントタンクで熟成させた。原料となったぶどうは、今のように厳しく選別されたわけでもないので、品質的には劣っていた。20年近く前、僕がフィレンツエで住んだ家の隣のフランチェスコが自分で造っていたワインも、セメントタンクでの発酵と熟成だった。美味しくはなかったが、食卓のワインとしてその役を果たしていた。当時、ワイン消費量が多い家庭は、ワイナリーにダミジャーノという大きなガラス瓶を持参してワインを買っていた。これはフランチェスコのものよりはるかに良いものだった。
 2009年の秋にソラティオーネで、バルクで売るつもりだというワインを飲ませてもらった。フレッシュ感が際立っていた。バリックの木香に慣れ切ってしまった僕には新鮮な印象だった。バランスの良い酸味とほどほどの厚みがこのワインの褒めてあげるところ。色はサンジョヴェーゼとしては赤みが強い。「2ユーロで売却するのは惜しい」と言ったら、ファッビオから「瓶詰めすると、保管場所に困るので」と返ってきた。彼は消防署に勤めながら、妹のフランチェスカ、母親と一緒にワイン造りをしている。思い切って2500本を瓶詰めしてもらった。ただし一括引き取りが条件となった。
 「チフー」はいろいろなぶどうの混醸、セメントタンクでの熟成など、昔のトスカーナの赤ワインと造り方は変わらない。しかし「チフー」のぶどうは厳しく選別されているし、発酵、熟成工程は最新技術で管理されているので品質に遜色はない。「昔あったワイン」の現代バージョンとして提案したい。樽香には飽きて、「チフー」のようなフレッシュな飲み口のワインを求める消費者も増えてきている。とはいってもこのワイン、アルコールは14度あるのでボリュームもあり堂々としている。