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Mastrojanni

マストロヤンニ

 このワイナリーは1975年に創業されている。蒲田の遺物堂に残るマストロヤンニの最古ヴィンテージは1980年。しかし、このボトルは本格的な取引が始まってから、もらったものではないかと思う。どのようなきっかけで輸入したのか、記憶を辿ってみよう。「エトリヴァンを支えた人たち」の一人であるジャンカルロ・バルドリーガの従兄に紹介されたように覚えている。マストロヤンニ一族に女医の方がいた。この従兄は小児科医なので、つながりはこのあたりにありそう。20年近い取引があっても、マストロヤンニ一族で知っている人はアントニオだけで、この人はあまりワインには関心がなかったような印象を持っている。
 マストロヤンニがあるカステル・ヌオーヴォ・デル・アバーテ(Castel Nuovo dell’Abate)は、ブルネッロの生産地域としては新興である。マストロヤンニの畑は、黒い粘土質の土壌で小石もかなり混じっている。海抜は400メートルくらいで、風の通りがいい。畑は南、南東に開いている。
 初めて行ったころは、ワイナリーの設備は古く、手入れが行き届いてない印象を強くもった。ワインのスタイルは伝統的なもので、味覚的にはもう少し清澄感がほしかったが、品質全般を考慮すると輸入し易い価格だった。最近は設備投資にも力を入れ、ワイナリー内部を一新した。
 昨年春、マストロヤンニ一族はワイナリーをエスプレッソコーヒーで有名なILLY(イリー)に売却した。ブランドは旧名を残したが、商品の風貌はすっかり新しくなり、さすがイリーという感じだ。ワインの中味はどうだろうか。数年前からバリックを導入していたので、経営がイリーになったからといって、ワイン像に変化はない。直近の2003年と今回の2004年を比較するのは難しい。猛暑の2003年には出荷しなかった2002年を混醸して、過熟感をアジャストした(規定では17.54%まで別のヴィンテージの混醸が認められている)。2004年は収穫年の季節の移り変わりを反映して均整がとれている。以前よりも鮮明なヴァニラ香は、使用した木樽の材質と容積の違いに由来しているのだろう。特にスキエーナ・ダージノ(Schiena d’Asino)でそれを感じる。マストロヤンニは、このワインをリゼルヴァと位置付けているので、6年目に出荷されるリゼルヴァはない。イリーになってからの価格の急激な上昇に戸惑いを覚えるが、ワインも世界戦略の中に組み込まれてしまうとこうなってしまうのだろうか。
 ロッソ・ディ・モンタルチーノ2007年は、オーストリア産のオーク樽から伝わったヴァニラがうまく果実と混じり合っている。先日樽から飲ませてもらったブルネッロ2007年との違いは、テクスチャーの厚みの違いだけ。2012年にリリースされるブルネッロ2007年と比較して楽しむのも妙案。
 サン・ピオ(San Pio)2006年は、以前とはぶどうの混醸比率が違っている。サンジョヴェーゼとカベルネが逆転した。前者が20%, 後者が80%。300リットルのフレンチオークで18ヶ月間熟成させている。カステル・ヌオーヴォ・デル アバーテは、モンタルチーノでも日照に恵まれた地域で、カベルネも青味が少ない。サンジョヴェーゼ以外のぶどう栽培にも適しているようで、シラー、モスカデルロなどの畑もある。カーザ・ノーヴァ・ディ・ネーリのカベルネ、ピエトラドーニチェ(Pietradonice)も確かこのあたりだ。San Pioは、まだスーパートスカーナでも手軽な価格帯にあるが、近い将来、イリーはその資金力にものをいわせて、このワインを超スーパートスカーナにしようと考えているのではないか。今のところは、スーパートスカーナ入門に最適なワインとしてお勧めしたい。

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