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Ganzo 2007年

ガンゾ

 Ganzo(ガンゾ)の由来。ganzoはイタリア語、いやトスカーナ方言だと、人はそれぞれに譲れないところがあるようだ。トスカーナ方言が標準化してイタリア語が生まれたのだから、ganzoは立派なイタリア語だという人もいる。小学館発行の『伊和中辞典』を参考にすると、①愛人②やり手、したたかな人、とある。まず①の意味で人の口から出ることは少ない。では②はどうかというと、当てられた日本語とも少し違っている。僕のイタリア語経験から例をあげると分かり易いかと思う。素晴らしい料理を出してくれたシェフを相手にして、「ganzo」と言ったとしよう。これは料理人の腕前を最大限に褒めたことになる。自分の印象にしか過ぎないが、トスカーナ地方全体というよりもフィレンツェ周辺で頻繁に耳にする言葉である。
 Ganzoは「うまくできた」と理解するのがそれぞれの場面で妥当のようである。話題にしているワインの中味はメルロー(70%)とサンジョヴェーゼ(30%)の混醸で、この比率はヴィンテージの性格に合わせて自由に変更できる。生産者ピエロ・マージによれば、理想的な気候変化で育ったメルローが、酸味を程よく残すサンジョヴェーゼとペアを組むと今回のような飲み心地を獲得するという。   ティレニア海沿岸部では、温暖化の影響でメルローの成長サイクルに変化が起きつつあり、熟成期が異なる他のぶどう品種との混醸が難しくなってきている。マージの畑がある北部トスカーナの高地はまだ温暖化は顕著ではないので、メルローが過熟気味になることはない。
 これは余談。スーパートスカーナが誕生する過程で、メルローは国際品種と呼ばれてきたが、マージの父親が小作人として働いた時代からすでに植栽されていた。気候の関係でサンジョヴェーゼの完熟は期待できなかったからだ。カベルネもトスカーナ地方では最近のものと思われがちだが、カルミニャーノ(Carmignano)の例でも明らかなように、ある地域ではかなり前から栽培されていた。20年前の話。モンタルチーノでタレンティからカベルネを飲ませてもらったことがある。僕が冗談で「スーパートスカーナは無理?」と言ったら、カベルネを出してきた。メモ程度のラベルには1978とだけ書かれていた。この時すでに古酒の領域に入っていて健康年齢は失っていたと記憶する専門的なことを理解する準備ができてない自分にも、テロワールと人の知恵の関わり合いが伝わってくるワインだ。筋肉質の酒質を求めたらやや物足りないかも知れないが、ついついグラスに手がのびる。グラスの形状はブルネッロで良いと思うが、現時点では鼻よりも口で楽しむワイン。

2010年5月30日
新横浜