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Mastrojanni

Mastrojanni

マストロヤンニ

 このワイナリーも、エトリヴァン扱いのブルネッロとしては歴史が長い。僕をここに紹介した人たち自身がそのことを覚えてない。そして、出会いがどのようなものだったのか、自分の中でもあやふやになっている。
 それでも、ここに初めて訪ねた時の印象は今でも鮮明だ。今はすっかり変わったが、ワイナリーの中は清潔感が乏しく、良く言えばワインの香り、悪く言えば果物の腐りかけた発酵臭のような臭いが漂っていた。そのころ、これはどこにでも見られたことで、カザノーヴァもそうだったし、ファンティは洞窟を思わせるような地下蔵に熟成樽が並んでいた。オレーナもモンテヴェルティーネも清潔感からはほど遠かった。日本に着いたマストロヤンニのダンボール箱には、ワイナリーの発酵臭のような臭いが染み込んでいた。
 最初に輸入したヴィンテージは1988年だったと記憶している。それ以降に出荷されたブルネッロはすべて購入してきた。2002年は生産していない。このワイナリーは、ラ・ポデリーナと隣接していて、モンタルチーノの南西斜面にぶどう畑を所有している。ごく最近、エスプレッソコーヒーのイリー(Illy)に買収されたが、前オーナーはマストロヤンニ一族で普段はローマに住んでいて、収穫期を除いてはモンタルチーノに来ることはなかったらしい。20年以上も取り引きをしているが、一族のひとりのアントニオに一度だけワイナリーで会った。醸造も販売もずっとアンドレア・マケッティ(Andrea Machetti)がひとりで頑張ってきた。少なくとも、03年ヴィンテージのブルネッロまではバリックを使っていない。アンドレア自身が、はっきりした反バリックの醸造家で、伝統的スタイルのブルネッロにこだわっている。遺物堂に歴代ヴィンテージを残してあるが、古いものを開けても首をかしげるものは少なく、まだまだ健康年齢の範囲内。
 オーナーがイリーになったことにより、ワインのスタイルが一気に変わっていくとは考えにくいが、アンドレアの醸造家としての立場がどこまで守れるかは微妙なところ。ここにぼくは注目している。事実、04年ヴィンテージは高級感を全面に出したパッケージリングが採用され、世界市場を相手にしようという意欲が見てとれる。ここのブルネッロは、比較的安く市場に多くのファンを獲得してきた。アンドレアは「何も変わらない」と強調するが、現実には早いスピードで変貌している。たとえば、新しいパッケージリングの04年ブルネッロは、出荷価格が二割以上も上がっている。おそらくこの先、ワインのスタイルも少しずつ変わってくるだろう。市場(特にアメリカ)の求めるスタイルのブルネッロに応えようとすれば、彼もバリック熟成に軸足を移すのではないか。最近起きたブルネッロ偽装事件(別項参照)と、アメリカ市場が求めるブルネッロは無関係ではない。

1988年より現在まで生産者から輸入。
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